義明の逮捕よりも、同日に起こされたある訴訟のほうが、メーンバンクの「みずほ」を震撼させた。ついに堤家の「次男」が登場したからだ。 東京地検特捜部の係官が運転する白いミニバンが、東京・芝にある東京プリンスホテルの食材・手荷物搬入口に到着したのは、三月三日午前九時五十一分。十数人の従業員、約三十人の報道陣が見守るなか、十時七分に後部座席をカーテンで覆った状態で発車し、霞が関の東京地検に向かった。 日本中が注目した前コクド会長、堤義明(七〇)の逮捕劇。実はこの日、東京地検の建物の南西側に隣接する東京地裁に一通の訴状が提出された。原告は義明の異母兄で元セゾングループ代表の堤清二(七七)と清二の姉妹の親族計三人。西武グループの中核会社コクドの株式について、名義人になっているプリンスホテル社長の山口弘毅(六八)やコクド社長の大野俊幸(六六)など二十七人を相手に、株の所有権は堤家にあることの確認を求める訴訟を起こしたのである。 この訴訟が、昨年十一月に太平洋セメント相談役の諸井虔(七六)を委員長に発足した「西武グループ経営改革委員会」(以下、委員会)と、その背後にいる西武グループのメーンバンク、みずほコーポレート銀行を震撼させた。

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