ミャンマー軍事政権で序列三位だったキン・ニュン首相(当時)が昨年十月に不正蓄財容疑などで逮捕、更迭された。以来、ヤンゴン駐在の各国外交団の情報収集能力が著しく低下。軍政指導部幹部の動静すら把握に手間取っている。 これは、キン・ニュン氏が二十年以上掌握していた秘密警察部門の国防省情報総局(MI)からのリークに全面的に依存してきたためだ。同氏の失脚とともにMI人脈が一掃され、機密事項も含めた軍政サイドの情報が完全に途絶えた。情報収集で珍しく評価の高かった日本大使館も、いまや「偏った情報源に長年頼ってきた」(外務省高官)ことを責められている。 軍政に比較的近いとされる中国も例外ではない。タイ外務省高官によれば、ソー・ウィン首相が最近、二週間以上も公式の場に姿を見せなかった際、駐ヤンゴンの中国大使館が同省に「クーデターが起きたのでは」と照会してきたという。 キン・ニュン氏は、逮捕された後、ヤンゴン北郊のインセイン刑務所に送られ、現在は自宅に夫人とともに軟禁されている模様。同氏が掌握していたMIの将官二十六人を含む約三百人の部下については、同刑務所に特設された一般法廷の下級審で一月下旬から裁判が始まっており、その判決次第で、最高刑を死刑と定めた国家反逆罪がキン・ニュン氏に適用されるかどうかが決まるとみられる。氏に忠誠を誓う将官の一部は、同刑務所内での尋問の際、拷問で死亡したとの情報もある。

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