中国側も憂慮を深める「対話なき日中」

執筆者:藤田洋毅2005年4月号

歴史上はじめて、「強国同士」として向き合う日中。対立と戸惑いを乗り越えることはできるのか。 天津の一夜、ふと立ち寄ったショッピングセンターに、回転寿司を真ん中に据えた日本レストランがあった。ウェートレスは仕事の合間、メモ用紙片手に次から次へとテーブルに立ち寄り接客用の日本語を学ぼうとする。「偏口魚って?」と逆にメニューを指差して尋ねると、「天津界隈だけの言い方。ふつうは比目魚または左口魚=ひらめ=ですね」と解説してくれる。他の沿海都市に比べ対外開放が遅れ気味といわれる天津ですらこうだ。北京や上海などでは日本式のラーメン・牛丼チェーン店が大繁盛。日本の庶民の味は着実に中国に根をおろしつつある。 だが、中国人の胃袋には浸透する「日本」も、脳や心には届かない。この数年、両国の摩擦・衝突は絶えず、エスカレートし続ける。「左口魚が大好き」だという国務院と党中央宣伝部の二人の中堅幹部は、刺身の盛り皿を前に胸の内を明かした。「中日関係は、新たな段階に入りつつあり、双方とも、いかに冷戦思考を突破するのか、大きな試練に直面しています。中日交流二千年の歴史における最大の転換点にさしかかっているのです」江沢民「反日」の意外な真相

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