日本の総合化学業界が有卦に入っている。大手五社が二〇〇五年三月期、揃って過去最高益を更新するのは確実だ。三菱化学、住友化学、旭化成の年間経常利益は、初めて一千億円の大台を上回る。各社とも牽引役を果たしているのは、石油化学事業の中国向け輸出。ナフサ(粗製ガソリン)から作る代表的な基礎原料のエチレンでみると、昨年の中国は年間消費量千八百万トンの半分以上を輸入に頼った。自動車や家電市場が急速拡大する中で、その素材となる石化製品にもブームが起きているのだ。 しばらくは中国に期待できるというのが業界関係者の一致した見方。安い人件費を生かせる加工分野に比べ、装置産業である素材分野はコスト削減が難しい。つまり中国の素材不足は構造的な問題でもあるからだ。ただ、ある大手メーカー幹部は「五年先、簡単に中国で儲けられるとは思わない」と打ち明ける。中国には今後数年で、大規模エチレンプラントが続々と立ち上がることが、その理由である。 国内需要の増減に対応するための「調整弁」的に輸出をしている日本メーカーと違って、資金力に勝る欧米メーカーは中国現地生産に戦略をシフトしている。独BASFは今年半ば、南京でプラントを稼動。同時期には上海で英BPのプラントも生産を開始する。いずれも中国石油化工(SINOPEC)との合弁だ。十一月には広東省恵州の英蘭ロイヤルダッチ・シェルのプラント(中国海洋石油=CNOOCとの合弁)稼動が控えている。ほかにも米エクソンモービル(二〇〇八年、福建省にプラント建設予定)、米ダウ・ケミカル(二〇一〇年、沿岸部での建設を予定)と、新規プロジェクトが目白押し。

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