太陽と同じ原理に基づき地上でエネルギーを作り出す実験施設、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の本体建設を巡る日欧間の交渉が大詰めを迎えている。三月上旬にブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)競争力担当相理事会は「技術的な課題はすべて検討した。あとは政治決着だけだ」との結論に達した。三月末にシラク仏大統領が訪日する際の決着を日本に促したとも受け取れる。 EUはITER本体の建設候補地として南仏カダラッシュを推し、青森県六ヶ所村に誘致したい日本と対立。カダラッシュはマルセイユから車で一時間ほどの小さな町。誘致による地元への経済効果に期待は大きい。昨秋、マスコミなどを招いた現地見学会には地元政治家ら利権絡みの関係者も大勢参加した。 勢いに乗ったドベール仏研究担当相は「話し合いが決着しなければ、日本抜きでカダラッシュへの建設計画を進めることになるだろう」とぶち上げ、日本の強い反感を買った。最近は「できる限り日本にも参加してもらう形でプロジェクトを進めたい」(同研究担当相)と慎重姿勢に転じたが、EU側はカダラッシュ以外への建設はまったく念頭になく、関心は「日本がどこで折れるか」に集まる。 実は日本側は、妥協へ向けたシグナルをEUに送っている。日本は先に、本体を日本に建設できれば欧州企業に設備を発注したり、欧州の研究者を多数受け入れたりする案を提示。背景には「同じ程度の案をEUも出せないか」と、相手側の妥協を待つ気持ちがあるようだ。

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