当時を振り返るデルプシュさん
当時を振り返るデルプシュさん

 フランスの女性料理人のダニエル・デルプシュさん(70)が故ミッテラン大統領(在任1981-95年)に請われ、初の女性料理人としてエリゼ宮入りしたのは88年。2年間、大統領専属の料理人として腕を振るった。昨秋、フランスで彼女のエリゼ宮の体験が映画化され、9月には日本でも『大統領の料理人』の邦題で公開される。デルプシュさんに話を聞いた。

 

料理長との確執

 パリ特派員時代、私はフランスの饗宴外交を取材するため、エリゼ宮にかよった。92年から93年にかけてで、デルプシュさんは去った後だ。厨房では約30人の料理人が働いていたが、すべて男性。ジョエル・ノルマン料理長(当時)に「女性料理人はいないのですか」と聞くと、「女性は必要ない」とそっけなかった。デルプシュさんの名前も出ず、彼女がいたことさえ知らなかった。いまとなれば分かる。料理長は彼女のことに触れたくなかったのだ。

「ノルマン料理長とはよくやり合いました。彼は私が目障りだったのでしょう。大型冷蔵庫を使わせないとか、食材を融通しないとか、嫌がらせをされました。厨房は男性優位社会の典型です。フランスがって? いえフランスの料理界は女性蔑視の塊です。いまは少しは変わりましたが」

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