ユーロに背く孤高の通貨ポンド

執筆者:福本容子2005年5月号

なぜイギリスはユーロに参加しないのか。その背景には「ブラック・ウェンズデー」をきっかけにした独自路線の成功があった――[ロンドン発]英国で新年度の予算が発表される日は、特別な一日だ。「予算委員会」とは名ばかりの議論を延々と繰り広げる日本とは大違いの、まさに予算と政府の経済運営方針が堂々の主役になる一日である。 三月十六日――五月に行なわれる総選挙前、しかも次の首相になれるかどうかの崖っぷちにいるという事情もあり、今年の予算演説にはゴードン・ブラウン財務相の並々ならぬ熱が込められた。「統計上遡れる一七〇一年以来、英経済は最も長期の拡大を続けている」。そう切り出した後、得意の数字を並べたて、成果を強調。「十二月に四十九・四半期連続の成長と報告したが、今や五十期連続だ。これはさらに五十一期、五十二期、五十三期、五十四期と続く」。 だが対照的に、これまでにないほどそっけない扱いを受けた話題がある。英国のユーロ加盟問題だ。独仏などユーロ加盟国に比べると英経済の財政状態、雇用がいかに堅調かを強調した後、ブラウン氏はほとんど皮肉まじりに付け足した。「この問題にご関心の方がいらっしゃれば、ちなみに英経済は毎年、(財政赤字の国内総生産比三%以下などユーロ加盟の条件を定めた)マーストリヒト条約を満たしているとご報告しておきたい。なお、(ユーロ加盟を問う国民投票実施の前提となる)査定を新たに実施する予定はない」。

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