米首都ワシントンで三月二十六日、土曜日にもかかわらず、ホワイトハウスや国務省、国防総省などから、対シリア政策を担当する高官らが集まった。 ライス国務長官は、ワシントン・ポスト紙に「あらゆる可能性を探り、可能な限り(シリアとレバノンの)多くの人物と接触したい」と語った。 ハリリ前レバノン首相爆殺テロ以後、レバノンとシリアの情勢は激しく流動化している。場合によっては、シリアのアサド政権が突如動揺することもあり得るとみて、ブッシュ米政権は、シリアの野党勢力にまで触手を伸ばそうとしているのだ。 あまり知られた名称ではないが、ブッシュ政権は昨年十二月以来、中東から北アフリカに至る地域で経済と政治の自由化を促すため「拡大中東・北アフリカ構想」(BMENA)という総額約六百億ドルの民主化構想を推進している。全中東・北アフリカ地域で親米国家を拡大するのが狙いだ。 一月のイラク国民議会選挙、パレスチナ自治政府議長選挙、二月にはサウジアラビア初の地方選挙、エジプトでは民主化運動、さらに三月クウェートで女性参政権要求デモと、やや気が早いが“アラブの春”とも言われるほどの異例の民主化の動きが続いている。 そんな折、聖バレンタインデーにレバノンでハリリ前首相ら十九人が爆殺される事件が起きた。国連安全保障理事会は昨年九月、シリア軍のレバノン撤退要求決議を採択したが、その舞台裏ではハリリ氏が米国、フランスを説得して決議案提出を実現した。反シリアのハリリ氏を殺害したのはシリアの意を受けた組織の秘密工作に違いない、とレバノン国民が怒り、大規模なデモが展開されたのである。

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