フランスのシラク大統領が日本を公式訪問した。大統領にとって沖縄サミット以来、五年ぶりの訪日だった。 三月二十六日、大阪入りした大統領は、工場見学、関西経済連合会との会合をこなした後、お目当ての大相撲春場所に。大の相撲ファンの大統領は日本相撲協会の北の湖理事長から説明を受けながら、取組表を手に観戦。一つ一つ決まり手を書き込み、結びの一番で横綱朝青龍が優勝を決めると大喜びだった。 観戦後は横綱朝青龍、相撲協会幹部と夕食をともにし、「相撲を見られてよかった」と繰り返した。私が知る限りフランス人で相撲好きな人はさほど多くないが、大統領はどこに魅かれたのか。「磨かれた技が一瞬で巨漢を倒す。これが相撲の真髄だ」。大統領は隣のベルナデット夫人に説明している。 二日目は開幕したばかりの「愛・地球博」を見学し、夕方、新幹線で東京駅に。そこから小泉首相との会談のため外務省飯倉公館に直行した。 シラク大統領をどう迎えるか、日本側はこれまで以上に知恵を絞った。両国には二つの懸案があった。東アジアの安定を揺るがしかねない欧州連合(EU)の対中武器禁輸解除問題でフランスが解除派の先頭に立っていることと、国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致での日仏間の綱引きだ。会談は厳しいものになるだろうが、一方で、日本文化の理解者である大統領は大切にしたい。会談後の夕食会が「飯倉公館始まって以来」という内容になったのもそのためだ。

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