インドネシア「さらなる成長」への課題

執筆者:森山伸五2013年8月8日
 昨年、過去最高だったインドネシアの自動車市場でスズキはシェアアップを目指す   (ジャカルタ市内)(C)AFP=時事
昨年、過去最高だったインドネシアの自動車市場でスズキはシェアアップを目指す   (ジャカルタ市内)(C)AFP=時事

 中国経済が失速の淵に立ち、インドの成長がもたつくなかで、日本企業の目は東南アジア諸国連合(ASEAN)に向いている。つい2、3年前まで中国一色だった日本の新聞、雑誌、テレビも今やASEAN特集が毎週のように組まれている。そのなかでも昨年から日本企業の新規投資を勢いよく吸引しているのはインドネシアだ。

 

スズキの戦略

「スズキ、1000億円でインドネシアに新4輪工場」――。7月末に明らかになったスズキのインドネシアでの完成車工場建設のニュースは、様々な意味でASEAN経済の勢いを象徴している。ひとつはスズキの投資対象地域の選択だ。スズキは中国では重慶市で長安鈴木汽車を1990年代から経営、小型車の分野では中国市場でそれなりの存在感を持っている。だが、日産自動車、ホンダなどが合弁の新工場を各地に展開、中国市場の膨張の波に乗ろうと、次の一手を次々繰り出すなか、スズキは敢えて中国への追加投資を見送ってきた。

 言うまでもなく、インドで乗用車市場の半分近いシェアを握り続けるなど成功してきたスズキは途上国、新興国での工場運営やマーケティングのノウハウ、市場の先行きを見る眼を、他の日本メーカー以上に蓄積している。そのうえで、中国ではなく、インドネシアでの新工場を選んだ点にスズキの市場への評価がしっかり表れている。スズキはインドネシアでの既存の工場も能力を倍増させ、年産20万台に拡張する。加えて年産12万台の新工場の建設でインドネシアでの生産能力をさらに増強し、シェアアップにアクセルを踏み込む。

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