[ジャカルタ発]三月二十八日。昨年十二月の巨大地震と津波で甚大な被害を受けたばかりのインドネシア・スマトラ島北西部を再び大地震が襲った。スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は三十一日、千人以上の住民が死亡したと見られる最大の被災地、同島西方沖のニアス島にヘリで飛び、呆然とする島民らを励ました。 しかし、島の中心都市グヌンシトリでキリスト教会の追悼ミサに出席したり、震災直後に島で生まれた子供に名前を授けるなど、テレビカメラの前で「国民の心の支え」としての姿を誇示する大統領の口からは、緊急支援や復旧・復興に向けた具体的な言葉は出てこない。その役割を一手に引き受けていたのは、大統領から二日遅れてニアス島入りしたユスフ・カラ副大統領だった。「死傷者は二千人に達する恐れもある」「電気や水道の完全復旧は三カ月後になる」。記者団の前に頻繁に顔を出し、歯切れのいいコメントを連発するカラ氏は、時にはユドヨノ氏をしのぐ存在感から、「スーパー副大統領」のあだ名さえつけられた。しかし、インドネシア政治史上では初代ハッタ副大統領以来といわれる実力派ナンバー2は、昨年十月に国民の圧倒的期待を背景に誕生したユドヨノ政権を揺るがす“時限爆弾”と化す恐れが出始めている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。