NHKとBBC――財源をめぐる「動と静」

執筆者:簑葉信弘2005年5月号

日英両国の公共放送を支えてきた「あまねく集金」システム。転機に際してそれぞれの組織と国の対応の隔たりはあまりに大きい。 一連の不祥事に端を発するNHK受信料の支払い拒否は、NHK自身の年度末(三月末)までの見通しを超えて七十四万七千件に達した。受信料はNHKを維持運営するための「特殊な負担金」とされている。放送法は「テレビを設置した者はNHKと受信についての契約を結ばなければならない」と規定しているものの、支払いを義務づける規定はなく不払いに対する罰則もない。 三月九日の参議院予算委員会で、麻生太郎総務相は「罰則の導入」を口にした。実際、「イギリスのように罰則を導入すべきだ」という主張は勢いづいているようだ。しかし、受信料問題でNHKが突きつけられたのは、制度の維持を前提とした小手先の処方箋で済む問題ではない。 イギリスでは逆に苛酷な罰則に疑問の声が高まっている。イギリスの公共放送であるBBCの場合、NHK受信料にあたる受信許可料は政府から国民が受信の許可を受ける時の手数料として徴収され、不払いには最高千ポンド(二十万円)の罰金が科せられる。罰金を払わなければ投獄されることもある。 もう一つの大きな違いは料金額の決定方法だ。受信許可料はイギリス政府が一九八八年から導入した物価スライド制により、物価上昇に連動して毎年自動的に値上げされる。BBCの経営水準を維持し、政府からの圧力を回避するためだ。現在は地上デジタル放送への切替に向けて基盤を整備するため、さらに一・五%の加算があり、今年四月からは約四・五%値上がりして年額百二十六・五ポンド(約二万五千三百円)となっている。

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