海外投資家の「日本買い」が息切れするとき

執筆者:小田博利2005年5月号

日本経済の自律回復シナリオが説得力を失いはじめ、「日本買い」を続けてきた米国マネーは静かに利食いの機会を窺っている。「ところで、日本株は買い続けるのだろうね?」。日本の金融関係者の質問に、電話口の向こう側の米投資アドバイザーが一瞬、口ごもった。「日本経済の構造改革」を買い材料にしていたはずなのに、何かが違う。三月末に外国人投資家の日本株買いが、四カ月ぶりに止まった。 日本の株式に投資してきた外国人投資家も、そろそろ痺れを切らしだしたようだ。春までにはメドが立つはずだった景気回復が、後ズレしている。米中に頼った景気持ち直しを自律回復につなげるシナリオが実現するかは、依然不明だ。 三月の日銀企業短期経済観測調査(日銀短観)をみよ。好転を見込んでいたのに、大企業・製造業の業況判断指数は二期連続で悪化した。「良い」と「悪い」の回答割合の差は一四と、前回昨年十二月に比べて八ポイントも悪化した。 一年前にはデジタル家電を囃していた電機。業況判断指数は一一の「良い」超から、三の「悪い」超へと暗転した。ソニーでは出井伸之会長兼グループCEO(最高経営責任者)が業績不振の責任を取って退任する。 三洋電機に至っては、「ジャーナリスト」の野中ともよ氏を、会長兼CEOに迎え入れた。ライブドアのホリエモンが「実力者」に見えてしまうような、崖っぷちの人事である。トヨタ自動車や日産自動車が快走しているはずの自動車も三七から三二へと「良い」超の幅が縮小した。

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