中国人満載バスのたどり着いた先は?

執筆者:竹田いさみ2005年5月号

 中国とベトナムの国境。溢れるほどの荷物を積み込んだ大型トラックが、ベトナム側検問所で行列を作っている。検問所といっても、積荷のチェックはさほど厳しくなさそうだ。運転手は通行証らしき書類を見せ、挨拶をして通過していく。中越間の国境貿易は限りなく自由に行なわれているようだ。 こうしたトラックに混じって、小型や中型の観光バスが行儀よく並んでいるのに気づく。日本でよく目にする二階建ての観光バスほど大型ではない。その国境地帯は、「辺鄙な」という形容詞がピッタリだ。どうしてこんなところに観光バスが押し寄せているのかと、素朴な疑問を抱いた。疑問が素朴であればあるほど、その答えを知らないままベトナムを後にしたりできない性分だ。予定を変更し、中国人を満載した観光バスのあとを追ってみることにした。 バスがたどり着いたところは、北ベトナムの風光明媚なリゾート地ドーソンだった。トンキン湾に突き出した小さな半島の先端にあり、夏の間は海水浴場として賑わうところだ。もともとはベトナム共産党幹部の別荘が立ち並んでいたらしい。東方へ二百数十キロの彼方には、中国の海南島があるはずだ。 バスは海に面した高台にあるドーソン・カジノの駐車場に入っていった。正式名称は「ハイフォン・ジョイント・ベンチャー国際観光公社」。つまり政府直営のカジノである。香港・マカオ系がノウハウを伝授しているとのことで、マネージャー・クラスは香港・マカオからの“外人部隊”だ。外国人のみが入場を許可されており、ベトナム人は外国人の同伴が必要だ。

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