いかにも進歩派らしく「バランサー論」を展開し始めた盧武鉉大統領。北朝鮮の核危機が高まる中、現実を見失う危険も――。[ソウル発]「われわれは今や韓(朝鮮)半島だけでなく、北東アジアの平和と安定のためにバランサー(均衡者)の役割を果たしていく。今後、われわれがどういう選択をするかによって、北東アジアの勢力地図は変化するだろう」 韓国の盧武鉉大統領は三月二十二日、軍士官学校で行なわれた卒業式の演説で持論の「北東アジア・バランサー(均衡者)論」を強調した。 盧武鉉政権は二〇〇三年二月の政権発足時から「平和と繁栄の北東アジア時代」を掲げてきた。「バランサー論」はその外交戦略といえる。韓国が中心になり周囲の強大国と等距離外交を展開するという構想の背景には、世界で十位前後の規模に成長した経済を背景とする韓国進歩派陣営の強烈なナショナリズムがある。 保守系有力紙『朝鮮日報』は、冷戦時代には日米韓の「南方三角同盟」と中国、ロシア(露)、北朝鮮の「北方三角同盟」が対峙したが、現在は日米が同盟関係を強化して中国、北朝鮮に対峙する構造が強まっていると分析。その中で均衡者の役割を果たすべきとする盧大統領の「バランサー論」は「韓米日三角同盟の転換を模索するスタート」と捉えた。

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