司法修習生の質の低下がとまらない。だが法曹人口は増える一方だ。容易に予見される将来の社会問題は――。 四月四日、埼玉県和光市の米軍朝霞キャンプ跡地にある司法研修所。司法試験に合格し入所式に臨んだ新修習生は、過去最高の千四百九十九人にのぼった。「法曹の卵」たちはこれから一年半の司法修習を経験し、修習の総仕上げである通称「二回試験」(修了試験)に合格することで法曹資格を得ることになる。 だが、法曹教育の現場では深く静かに異変が進行中だ。女子トイレに隠し撮り目的でビデオカメラを設置したとされた司法修習生(不起訴)や、幻覚作用のあるマジックマッシュルームを食べた修習生が寮の五階から飛び降りた事件などは氷山の一角にすぎない。 超難関の司法試験に合格した優等生たちの「落第」が急増している。「数を増やして質が下がったのではないか」。そう懸念する司法関係者は多い。約五百人という狭き門だった司法試験の合格者は、一九九三年から徐々に増え、二〇〇一年に約一千人となった。二〇一〇年には三千人にまで増やされる見込みだ。 修了試験の落第者は、合格枠の拡大に伴って増えてきた。「高齢の合格者ら多くても年に二、三人という例外」(最高裁関係者)だった落第者は、二〇〇〇年に十九人と急増。昨秋はついに四十六人にまで膨れあがってしまったのだ。多くは追試で救済されるが、修習生の二十五人に一人が「法曹失格」の烙印を押されたことになる。

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