伝えたい科学研究の楽しさ

執筆者:米沢富美子2005年6月号

 二〇〇五年の今年は「世界物理年」と定められ、世界中でいろいろなイベントが行なわれています。 いまからちょうど百年前の一九〇五年、二十六歳のアインシュタインは、三篇の論文で革新的な物理学理論を提案しました。特殊相対性理論、光量子仮説、ブラウン運動に関する論文で、これらの理論は二十世紀の物理学において中心的な役割を果たしてきました。いかに天才とはいえ、わずか二十六歳で、しかも数カ月の間に、このような偉大な仕事を三つも仕上げるのは並外れたことなので、一九〇五年は「アインシュタイン奇跡の年」と呼ばれています。 この「奇跡の年」から百年目を記念して設けられた「世界物理年」ではありますが、お祭り騒ぎの気分ではなく、物理学の楽しさを若い人たちに伝えることが最も大切な課題だとされています。というのは、若者の「理科ばなれ」は日本に限った現象ではなく、世界の多くの国で起こっているからなのです。この事実に対して物理学者たちも危機感を抱いており、「世界物理年」の事業をとおして物理学の重要性を一般の人たちに認識していただこうと考えています。 二十世紀は科学・技術の世紀だったと総括されています。始まったばかりの二十一世紀においては、科学・技術の重要性は一層大きく、人類の存続や地球の将来までもがかかっているのです。それにもかかわらず、物理学を含む科学全般に対して大人たちが無関心で、社会全体が「理科ばなれ」状態に陥っています。それを反映して、若者たちが理系を避け、仕事として科学を選ばなくなりました。

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