外銀によるイタリア金融機関の買収計画が「見えない壁」に阻まれている。かつて「ゴッドファーザー」と畏怖された故エンリコ・クッチャ氏の亡霊が徘徊しているかのようだ。「国境を超えた銀行統合を支援する立場から、公正なルールが尊重されることを望む」(欧州中央銀行)。欧州内でイタリアを非難する声が相次いでいる。「外銀を不当に扱っている事実はない」。伊中銀のアントニオ・ファツィオ総裁は反論するが、非難が静まる気配はない。 騒ぎの発端は三月末、オランダ最大手ABNアムロが伊九位行のアントンベネタを六十三億ユーロで完全買収する計画を打ち出したことだった。ベネタ株一三%の株主だったアムロは残りの株式を一株二十五ユーロで買い上げる意向を表明した。 これに「待った」をかけたのが伊中銀。国内銀行の合併・買収への拒否権を持つファツィオ総裁は、これまで外銀による国内銀行の持ち株比率を一五%以下に抑えるなど国内銀行が外銀に蚕食されるのを防いできた。 伊中銀はアムロの買収計画になかなか許可を出さず、その隙に伊中堅行のバンカ・ポポラーレ・ディ・ローディ(BPL)が持ち株比率を二%から三〇%に引き上げ、筆頭株主に躍り出た。

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