それでも欧州企業はイランを目指す

執筆者:会川晴之2005年6月号

核開発問題があろうと、世界有数の資源国の魅力は大きい。「資源以外」の市場に参入する欧州企業も目立っているが……。[ウィーン発]イランの核開発をめぐる欧州と米国の対応の差が際立っている。対話による解決を目指す欧州に対し、米国は経済制裁を伴う国連安全保障理事会への付託や軍事侵攻もちらつかせ、イランの譲歩を引き出す構えを崩していない。この違いの背景を探ると、米国の国内法であるイラン・リビア制裁法(通称ダマト法)で大規模投資を禁止された米国企業が身動きが取れぬ間に、イランでの利権獲得を図る欧州の狙いが見えてくる。「イラン企業が経営破綻した英MGローバーの買収を検討」。そんなニュースが四月中旬以降、英国紙の紙面を賑わせている。英老舗自動車メーカーのMGローバーは、中国の上海汽車集団(SAIC)との提携交渉が決裂したため四月十五日に経営破綻、解体が決まった。破綻の直後から二百件を超す買収提案が管財会社に殺到、その中にはイラン自動車産業三社も含まれていた。 英紙デイリー・テレグラフは、二〇〇四年からヒューイット貿易担当相やストロー外相など英高官が、同社救済をめぐってイラン政府と一年以上にわたり水面下の交渉を続けていたと暴露した。英当局は否定したものの、MGローバー社幹部は十五カ月に及び英当局とイラン政府が交渉し続けていたことを認め、両国の密接なつながりを垣間見せた。

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