靖国問題をゲーム理論で解く

執筆者:田中明彦2005年7月号

 靖国参拝問題は、現在の日中両国の指導者の認識が劇的に変わらないかぎり、解決は大変難しい。その理由を簡単なゲーム理論の応用で考えてみたい。この種の議論になじみのない読者には申し訳ないのだが、ゆっくり考えていただければ、きっとお分かりいただけると思う。 まず小泉首相にとっては二つの選択がある。第一は、参拝を継続することであり(参拝継続)、第二は、参拝をやめることである(参拝中止)。これに対して中国側の選択も二つと考えることができる。第一は日本批判を継続することであり(批判継続)、第二は日本批判をやめることである(批判中止)。このように日中双方がそれぞれ二つの選択を持っているので、結果は四通りだ。 その四つの結果は、小泉首相からみたときにどういう順位になるであろうか。一番好ましいのは、(参拝継続、批判中止)であり、最悪は(参拝中止、批判継続)ではないか。(参拝継続、批判継続)と(参拝中止、批判中止)のどちらがいいかは微妙だが、靖国参拝断固支持風に考えると、前者の方が比較的よいであろう。仮に点をつければ、(参拝継続、批判中止)は4点、(参拝継続、批判継続)は3点、(参拝中止、批判中止)は2点、(参拝中止、批判継続)は1点ということになる。

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