「大型プロジェクトを先食いするな」――中国共産党中央と国務院がここにきて、しきりに地方の党委員会・政府に呼びかけている。 二〇〇八年の北京五輪、一〇年の上海万博までは投資ブームが続き、中国経済は安泰とされるが、その後は経済の急降下が懸念される。すでに全人口の一割強となる一億三千万人を超えた流動人口の多くは、建設ラッシュの都市部に流入した農民工。彼らが職にあぶれて社会の安定を揺るがす事態は、なんとしても避けなければならないからだ。 日本の新幹線技術の導入をめぐって注目を集めている北京―上海間の高速鉄道建設計画は、当初、五輪前の開通が喧伝されてきたが、結局、中長期的計画に変わった。上海市が意欲的だった米系娯楽施設ユニバーサルスタジオの誘致計画も、国務院が「当面は批准しない」ことを決めている。 中国民航総局と天津市が中心となって、北京と天津の中間に位置する河北省廊坊市に準備していた天津の新空港建設も延期が決定。ひとまずは現在の天津空港を拡張することに落ち着いてしまった。 北京の五輪関連建設は〇七年末、上海の万博関連建設も一〇年の初めまでに終了させる方針。国務院はすでに、「建設労働者の、秩序ある需要地への大規模な移動に関する手法と規制」について研究を開始したという。労働争議の最大の原因となっている違法な「手入れ師(斡旋業者)」による搾取、給与不払いなどにも厳しい罰則を設ける方向だという。

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