金融緩和「出口戦略」めぐり世界に走る悪寒

執筆者:青柳尚志2013年8月30日
 バーナンキFRB議長の「出口戦略」に注目が集まっている (C)AFP=時事
バーナンキFRB議長の「出口戦略」に注目が集まっている (C)AFP=時事

 熱帯のような暑さが続いた2013年夏の終わり。アベノミクスで明るくなったはずの世の中の雰囲気は、どこかに消えている。ふと周りを見渡すと殺伐とした風景が広がり、わが身には夏風邪の引き始めのような悪寒が走る。

 混乱のきっかけは皮肉にも、米連邦準備制度理事会(FRB)が異例の金融緩和の蛇口を絞る「出口戦略」を模索したことだった。米国からの投資資金で有卦に入っていた新興国のマーケットは大荒れとなっている。今年9月は世界を大混乱に陥れたリーマン・ショックから5年。その混乱が解消されていないことを物語る出来事である。日本の株価も大きく下押し圧力を受けている。

 8月末にはシリア情勢の緊迫化が、こうした市場の混乱に拍車をかけた。11年に始まったアラブ世界の独裁政権打倒の動き、つまり「アラブの春」がシリアに及ぼうとしている。いや、そんな言い回しは綺麗事過ぎる。民主化され選挙で選ばれたはずのエジプトのムスリム同胞団 政権は軍部クーデターで倒され、その軍部の政権はデモを武力排除した。混沌の「アラブの夏」というべきだろう。

 日本にとっても11年に起きた東京電力福島第1原子力発電所事故は、依然として深刻な状況にあることが浮き彫りになった。増え続ける汚染水を収めたタンクからの300トンに及ぶ漏水は、世界に大きく報道された。9月7日に予定される国際オリンピック委員会の20年五輪開催地の決定でも、東京に不利な材料になったのは間違いあるまい。それよりも、原子力規制委員会が審査中の原子力発電所の再稼働問題の障害が増えたことのほうがより問題だろう 。

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