欧州で国境を超えた金融再編の動きが活発化している。だが、足枷となっているのが各国の「自己防衛本能」。イタリア中央銀行が外銀による買収の妨害に動いたとされる一方で、ドイツ国内でも伊銀による買収計画への警戒感が広がるなど、統合推進の「建前」と自国保護の「本音」が衝突する場面が目立つ。 この六月には伊大手銀ウニクレディトによる独銀第二位ヒポ・フェラインス買収が発表された。両行は五月末、事業統合の交渉を進めていることを認めていた。 買収総額は百五十四億ユーロ。欧州第九位の銀行が誕生し、ユーロ圏の国境を超えた銀行統合では史上最大となる。他でもないドイツの有力銀行を外銀が買収する初めての事例だけに衝撃は大きい。「外資が乗り込んできたら冷血無比のリストラが始まり我々は職を失う」。ヒポ・フェラインスの労組幹部は不安を隠さない。 独仏枢軸で欧州統合を推進してきた独政府関係者も「国際的な銀行の事業統合は好ましいこと」と表向きは歓迎しつつも内心は穏やかでない。ドイツでは九月にも総選挙が前倒し実施される公算があり、「選挙前の大規模リストラは大きな政治問題」と本音を漏らす。 両行にはそれぞれの思惑がある。ウニクレディトは伊北部、ヒポ・フェラインスは独南部を含む「ホット・バナナ」と呼ばれる先進経済圏の一部をともに地盤としているうえ、統合すれば中・東欧市場での存在感が一気に高まるからだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。