われわれは米国の中東における覇権の終焉の足取りを、一歩一歩見守っているのかもしれない。オバマ大統領は8月31日のホワイトハウスでの会見で、シリア攻撃をするべきと判断したとしつつ、議会での承認を求めたのである。これによってシリア攻撃開始への判断は9月9日の米議会の再開まで持ち越されることになった【発言全文】。

 議会の決定は予断を許さないが、否決される可能性も大いにあるという。ここでオバマ大統領が、議会の否決に従ってシリア攻撃を取り下げれば、米国の中東における覇権の希薄化を強く印象付けることは間違いない。

 シリアへの介入に極めて消極的で、半ば言い訳のように化学兵器の使用を「レッドライン」としてきたオバマ大統領は、8月21日に大規模な化学兵器の使用が疑われる事態が生じるに至って、ついにシリアへの直接的な軍事介入を決断したと見られてきた。行われる攻撃が「限定的」であり「政権転覆」を目指していないことを入念に強調し、丁寧にリークするオバマ政権の姿勢から、シリアの内戦状況を決定的に変えるものではないと予想されていた。しかし攻撃によってアサド政権を「罰する」ことは、「米大統領の信頼性」を守るために最低限必要なものと見られてきた。

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