「百年の安心プラン」は一年も経たず破綻した。その見直しも、問題を自分のために利用しようとする政治家たちの思惑に阻まれつつある。「あんなの早く止めてしまえばいい。まだやってるのか」 六月上旬、民主党の小沢一郎副代表はそう吐き捨てた。「あんなの」とは一カ月半ぶりに再開した衆参両院の年金合同会議を指す。 そもそも小沢氏は与党と共同で政策を話し合うことは「無意味」という考えだ。政策を実現させるには総選挙で政権交代して与党になるしかない――そう考える小沢氏にとっては、わざわざ与党と同じテーブルで議論する合同会議(与野党五党で構成)は「愚の骨頂」だった。 昨年六月、年金改革法案を強行採決した与党は「百年の安心プラン」と胸を張った。しかし、成立直後から迷走が始まる。まず出生率が改革の前提となった水準を下回っていたことがわかり、四十カ所もの条文ミスも発覚。国会議員の年金未納問題に火がつき、社会保険庁の不祥事も次々と露呈した。今年三月末になって、改革法の見直しを検討する合同部会の設置が決まり、今秋までに改革案の骨格を作ることになった。 年金を含めた社会保障制度の論議は、詰まるところ財源問題だ。少子高齢化の進展で社会保障費は膨らむ一方だが、税収の伸び悩みもあり財源は追いつかない。赤字国債を発行しようにもすでに限度を超えているため、増税するしかないのが実情だ。つまり、消費税率の引き上げである。与党は合同会議で「野党のお墨付き」を手に入れることを目論む。民主党を「共犯者」にひきずりこむことができれば、次期衆院選の争点が潰れるからだ。冒頭の小沢氏の批判は、参加に踏み切った岡田克也代表への非難でもあった。会議が始まった四月以降、民主党内における岡田氏と小沢氏の距離は一段と開いていた。

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