経営者としての器量が問われている水野明久社長 (C)時事
経営者としての器量が問われている水野明久社長 (C)時事

 政府による電力システム改革が遅々として進まない中、既存制度の根幹である電力業界の地域独占体制が崩れ始めた。先兵役となったのは東京電力、関西電力に次ぐ業界の「3 男坊」といわれてきた中部電力。8月7日に三菱商事子会社の「新電力」(特定規模電気事業者=PPS)である『ダイヤモンドパワー』(東京都中央区)の買収を発表、福島第1原子力発電所の事故以来瀕死の状況にある東電の牙城、首都圏に攻め入ることになった。

 ところが、 不可避の自由化を先取りした戦略ながら、そこは官僚主義のはびこった電力会社のこと。業界秩序を気遣って経営トップの歯切れは悪く、打つ手も小出しに見える。浜岡原発の再稼働断念、大阪ガスなどエネルギー大手との経営統合――。一見常識破りのこうした施策さえ、現実味を帯びている業界の現状からすれば、昨今の中部電力の動きはむしろ鈍いともいえる。

 

大口優良顧客が目白押し

 ダイヤ社は2000年3月の電気事業法改正(いわゆる“電力の部分自由化”)によって設立が認められた「新電力」の第1号。三菱商事の100%出資だったが、10月1日付で中部電力が80%の株式を10億円で買い取って子会社化する。残り20%は当面、三菱商事が引き続き保有する。

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