「ポスト小泉」の基礎知識

執筆者:2005年8月号

 自民党のルール通りだと小泉純一郎首相の「自民党総裁」としての任期は来年九月いっぱいで終わる。党則を改正しない限り、任期を延長することはできない。わずか五票差での郵政民営化法案衆院通過は、小泉政権の意外な脆弱さとポスト小泉をめぐるドラマの始まりを告げている。世上、「次の首相候補の顔が見えない」などといわれているが、かつて、次の政権担当者の顔が見えていることのほうがはるかに異例だったのである。 いかに政界に人材が払底していても内閣総理大臣のポストが空白になることはない。国会議員の中からだれかが選ばれる。小泉政権が四年以上も続いた(来年九月までつとめれば、在任期間は佐藤栄作、吉田茂に続く戦後三番目)最大の理由は、後継に有力な政治家がいない、ということであった。冷静に考えてみるとこれほどおかしなことはない。小泉は決して首相の有力候補ではなかった。一九九三年八月の細川護熙以来、だれが首相になったかを思い出してみる必要がある。細川、羽田孜、村山富市、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、そして小泉。細川以降七人の首相のうち、就任三カ月前に次期首相として有力視されていた人物は皆無だ。 だから心配するに及ばない。いまはさほどの人気も知名度もない人物でも、彗星のごとく現れて首相の椅子を占拠してしまうことだってあるかもしれない。そこで、ポスト小泉を占うとすると前提条件として二つの選択肢に分けて考えなければならない。まず政局混乱で任期半ばで小泉退陣という事態が生じた場合である。このケースは総選挙が行なわれているかどうかにもよるが、さまざまな予測不能なことが起こるだろう。仮に日中関係をはじめとして外交が政局の焦点になっているときには、いまの中国政府がもっとも信頼している福田康夫(前官房長官)の登板のケースも考えられる。福田は小泉の女房役だったが、首相の後継者という形ではなく、むしろ首相が敷いた路線への対抗軸という形で反小泉グループが担ぐということもありうるだろう。その場合、お膳立ては森喜朗(前首相)の役割だ。

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