まだ道は遠い中国の「世界の自動車工場」化

執筆者:五味康平2005年8月号

 ホンダの中国での生産拠点である本田汽車(中国)有限公司が六月末、「フィット(中国名では飛度)」の欧州向け輸出を開始した。本田汽車はアコード、オデッセイなどを生産する広州本田などに続く、ホンダ第三の中国生産拠点だが、中国政府との契約で外資初の輸出専用工場となった。ホンダは広州周辺ですでに年産二十万台を超す生産態勢を構築しているが、車体組み立てだけでなくエンジンや部品も含めた生産の収益を向上させるには、生産台数をさらに積み上げる必要がある。輸出専用工場の狙いはそこにある。 一方、中国政府側は、鉄鋼、樹脂、ガラスなど素材から電子部品、機械部品など裾野の広い自動車産業を輸出産業とすることで、「中国の民族系製造業の幅広い育成と高度化」を狙っている。国際市場で競争力の高いホンダをまず中国生産車の先陣として欧州市場に送り込むことで、上海汽車、第一汽車など中国主力メーカーによる生産車への信頼を先進国市場で築きたい考えだ。 中国の乗用車の輸出はすでに九〇年代末から細々と始まってはいる。上海VWのサンタナはフィリピンなど東南アジアに年間数百台から千台の規模で輸出され、トラックもアジア、アフリカ市場に輸出されている。だが、「自動車を輸出産業に」という中国政府のかけ声とはかけ離れた状況だ。

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