アフマディネジャード体制で力を増すイラン軍部

執筆者:田中浩一郎2005年8月号

今回の大統領選挙は武装兵力が行政の実権を合法的に奪取したものといえる。懸案に囲まれた新政権はどう動くか。 イランの有権者は第六代大統領として、選挙前に下馬評が高かった現実主義者のラフサンジャーニ元大統領ではなく、保守強硬派のテヘラン市長マフムード・アフマディネジャード(四九)を圧倒的な差で選んだ。 ここでは、八年間にわたって政治改革を主導してきたハータミ大統領といわば対極に位置する人物が選出された背景を、イラン社会の価値観の変化を眺めながら分析し、同時に懸案事項に取り囲まれたイラン体制の今後を探ることとする。 アフマディネジャード新大統領の諸政策にはこれから明らかになる部分も多い。現時点で判断が可能な、特に注目しておくべき要素のみを選び出して挙げてみたい。政治への橋頭堡を築いた保守派【勝因の分析】 アフマディネジャードの勝因は、選挙動員や貧困層の支持だけで説明できるものではない。核疑惑問題および対米関係すら最前線での争点ではなかった。複数の要因によって成り立っているこの選挙結果の解明のために、保守と改革の両陣営がともに分裂する中で行なわれた六月十七日の第一回投票と、対照的な人物像を持つ候補者の一騎打ちとなった同月二十四日の決選投票とを区別して分析する必要がある。

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