「アラブ連合軍」構想でサウジが米国を牽制

執筆者:池内恵2013年9月16日

 シリア化学兵器管理をめぐって9月14日にジュネーブで結ばれた米・ロの合意に対して、サウジアラビアやイスラエルなど、米国の中東における同盟国は、「切り捨てられた」と危惧の念を高めかねない。合意の内容がもし本当に実施されればそれぞれに一定の利益を得られるものの、内戦の状況下でアサド政権の化学兵器を廃棄していくというのは、現実性が乏しい案と言わざるをえない。実際にシリアに化学兵器を廃棄させることよりも、化学兵器管理をめぐって米・ロが合意することそのものに、超大国双方が利益を見出したという性質が色濃い。域外大国間の外交の前進は、地域大国の外交の敗北でもありうる。

 9月15日、ケリー米国務長官はどこよりも先にエルサレムに飛び、イスラエルのネタニヤフ首相に説明した。16日にはパリでオランド仏大統領、ヘイグ英外相との三者会談を行った。ここでサウジアラビアのサウード外相とも会談を行う予定である。まさに同盟国への説明に追われている状態だ。

 強硬姿勢を掲げつつ戦略意図を曖昧にして、予想外の展開を呼び込んだオバマ大統領の外交手法は、長期的には米国の国力の相対的な縮小に対応した巧みな撤退戦術と評価される日が来るかもしれないが、当面は国内でも、そして中東の同盟国からも反発を招いている。

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