「デリー行きジェット・エアウェイズ航空、遅延のお知らせです」――インドの港湾都市ムンバイ(ボンベイ)でこのアナウンスを耳にした瞬間、「ああ、この出発ロビーで、これから数時間も待つんだ」と覚悟を決めた。 ムンバイは海岸線の美しさで観光客を魅了するが、いつも海岸線には霞がかかっていて、カメラマン泣かせのスポットでもある。灼熱の太陽がアラビア海に沈むと、夕涼みを楽しむ市民が海岸に繰り出し、ゆっくりとした時間が流れていく。 それとは対照的に、夕暮れからムンバイ空港は喧騒につつまれる。とりわけ午後七時を過ぎると、国際線の空港ロビーは人でごった返す。インドから飛び立つ国際線フライトは、そのほとんどが午後九時から深夜二時の時間帯に組まれており、旅行者の疲労を倍増させる。ニューデリー、ムンバイ、チェンナイ(マドラス)、バンガロール、コルカタ(カルカッタ)からの国際線は、判で押したようにこの時間帯だ。これはパキスタンやスリランカも同じ状況で、たとえばスリランカのコロンボ発シンガポール行きは午前一時半頃に出発という具合だ。わずか四時間のフライトだが、眠る暇もないため、ほぼ徹夜状態で目的地に到着する羽目になる。

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