「朝鮮の同志の皆様には、ぜひとも冷静に認識してほしい。万が一、米国が決断したら、中国には手助けできる力がないのです」――中国高官は、苦渋の表情で北朝鮮高官に告げた。 四回目の六カ国協議開催に向けた中国の説得工作の山場は、昨年十一月の寧賦魁・朝鮮半島核問題担当大使の訪朝だった。寧大使は金桂寛・北朝鮮外務次官との会談で「米国は武力による解決の可能性を真剣に準備している。すでにミサイル発射台や製造施設、最高指導者の宿舎を含む二十六の攻撃目標を策定しているとの情報がある」と言明。米国は本気だと強調したという。 今年四月末以降、北は中国の通告が正しかったことを思い知る。「北の核実験は間近」との情報がワシントン発でリークされたのに続き、五月には米国防総省が朝鮮戦争当時の行方不明米兵の遺骨収集作業中断を発表、F117ステルス戦闘爆撃機十五機が韓国の群山基地に配備された。軍事攻撃に踏み切れるよう遺骨収集チームを引き揚げるとのメッセージだ。 北はこれを正確に受けとめた。六月一日、朝鮮中央通信は「朝鮮人民軍の板門店代表部の報道官は遺骨発掘隊を解体する。時を同じくした米国の遺骨収集作業の中断宣言とステルス機配備は、先制攻撃の意図を露骨に示している」と報じる。複数の日米軍事筋によると、ステルス機は「毎夜のように平壌上空を飛び、いつでも爆撃できるとの軍事威嚇を繰り返している」。米国は七月末、六カ国協議開催に合わせて米本土から沖縄の嘉手納基地へ低空飛行と対地攻撃を主任務とするF15Eの一編隊も送りこんだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。