今春、ポーランド・アウシュビッツ平和博物館の代表団が訪中した。黒龍江省ハルビン郊外に残る日本陸軍七三一部隊の本部や凍傷実験室跡などを見学して省政府幹部らと会談、双方の博物館・記念館にそれぞれの展示コーナーを開設する方向で話し合うことに合意した。中国は七三一部隊関連施設をユネスコ世界遺産に登録し「東洋のアウシュビッツ」と宣伝を強化する考えだという。 関東軍防疫給水部を正式名とする七三一部隊は、細菌戦や凍傷治療の研究のため中国人ら多数に生体実験を行なったとされる。ポーランド代表団に対し中国側は「アウシュビッツ強制収容所と同様、アジアでも軍国主義の侵略戦争は空前絶後の犠牲者を生み出した」と強調、七三一部隊関連のほか南京虐殺の犠牲者三十万人など、中国側の誇張した数字を詳しく解説した。相互展示のほか、ポーランド側は世界遺産登録や遺産保存のノウハウ提供などでの協力を約束したという。 ナチスドイツの行為と日本の過去を国際社会に同一視させようという中国の巧妙な宣伝戦略だが、歴史的事実を逸脱した誇張をもとに話を進めるのも常套手段。駐ポーランド大使館など日本の外交当局には、ポーランド側に客観的な事実を伝える責務がある。

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