[ブラチスラバ発]ユーロ危機で欧州経済が低迷する中、健闘する中欧のスロバキアを訪れた。ベルリンの壁崩壊後、1993年にチェコと平和的に分かれたスロバキアは今年、独立20周年を迎えた。過去5年間で欧州連合(EU)域内ではポーランドに次ぐ2番目の2.1%の成長を達成。スロバキアは地理的条件と勤勉な低賃金の労働力を武器に、「自動車の生産工場」になっていた。欧州の女帝・メルケル独首相が泣いて喜びそうな成功モデルだが、一方で、自動車生産で「欧州の虎」の異名をとるスロバキア経済にも少しずつ陰りが見え始めていた。

 

1人当たり生産台数で「世界一」

 旧共産圏チェコスロバキアは89年、「ビロード革命」と呼ばれる無血の民主革命に成功、93年に議会が機能停止に陥り、チェコとスロバキアは円満離婚した。高松明・在スロバキア日本大使は「スロバキアは他の国と比べて歴史が浅く、日本では知らない人も多いでしょう」と語る。面積は日本の青森、岩手、秋田、山形4県を合わせたより少し大きいぐらいの広さ(約4万9000平方メートル)で、人口は548万人。

「チェコの片割れ」と言われることが多かったスロバキアだが、経済・財政改革、民営化、外資導入を進めて2004年にEU加盟を果たし、09年にはチェコより先に単一通貨ユーロに参加した。経済成長率でもチェコ(過去5年間で0.34%)を大幅に上回っている。旧共産圏ではいち早くユーロに参加した旧ユーゴスラビア・スロベニアが、金融機関の情実融資で金融危機寸前の状態に陥っているのとは対照的に、スロバキアの主要行はほとんど外資系に買収されていたため、縁故主義による情実融資がはびこる余地はなかった。

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