金融庁が目論む「ペイオフ実戦演習」計画

執筆者:鷲尾香一2005年9月号

大手銀行の不良債権問題が峠を越え、金融不安が後退した今こそ、ペイオフの実施が眼前に迫っている。「ペイオフがいつ実施されても不思議ではない。当局は常にそれを念頭に置いている」 ある金融庁関係者は断言する。 ペイオフが全面解禁された今年四月一日以降、金融機関の経営不安は影を潜め、ペイオフ実施は掛け声だけの絵空事だったかのように、マスコミの話題から掻き消えている。だが、「机上の空論ではなく、経験則を得る必要がある」(同)との強い思いから、金融庁は今も実施の「対象」と「タイミング」を検討している。 その背景には、二〇〇三年末に発生した「佐賀銀行事件」がある。【緊急事態発生】と題する一通のメールに端を発した金融不安は、金融庁に強烈な教訓を与えていた。【緊急ニュースです。某友人からの情報によると二十六日に佐賀銀行がつぶれるそうです!預けている人は明日中に全額おろすことをお勧めします。(中略)信じるか信じないかは自由ですが、不安なので明日全額おろすつもりです!(中略)以上緊急ニュースでした】 佐賀県に住む二十代の女性が、このような内容のメールを携帯電話から三回に分け、二十六人の友人たちに送信したのは、〇三年十二月二十五日未明のこと。メールは次々と転送され、さらには口コミで広がり、佐賀銀の取り付け騒ぎが発生した。

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