ふりだしに戻った西武グループの再編問題。手枷足枷をはめられ追いつめられた後藤社長に残された策とは――。 八月十日午後五時、四月に開業して以来の業績不振の噂を裏付けるように人気のない東京プリンスホテル・パークタワー(東京都港区)の宴会場フロア。失脚した西武グループ総帥の堤義明(七一)にとって「最後の作品」となったそのホテルの奥まった一角で、西武鉄道社長、後藤高志(五六)の記者会見が始まった。 西武鉄道とコクド、プリンスホテルの三社合併を断念し、純粋持ち株会社方式によるグループ再編を目指す――。これが会見のテーマだったのだが、いつになく表情に険しさを漂わせた後藤は、いきなりその日の各紙夕刊の記事の批判を始めた。「西武が『銀行管理状態にある』という指摘は事実と異なる」 みずほコーポレート銀行副頭取を退任し、特別顧問として西武鉄道に入社したのが今年二月。五月二十四日の社長就任会見では「西武鉄道とコクドの一体再生がベストの道と確信している」と余裕のコメントを発していたが、わずか三カ月足らずで状況は一変した。数十人の記者と十台前後のテレビカメラを前に、後藤はかなり苛立っていた。「潮目が変わった」 後藤の情緒を不安定にしていた最大の要因は、おそらく義明の実弟である堤家の五男・猶二(六三)の動きだろう。猶二は、西武鉄道の親会社で事実上のグループ中核会社でもあるコクドの株式は「堤家のもの」であるとして、二月に株式所有権確認訴訟を起こし、それに関連してコクドの定時株主総会の開催禁止を求める仮処分を申請していた。

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