投資家から資金を集めて企業を買収、リストラで企業価値を高め再上場などで巨利を狙う再生ファンドにとって、経済の激変期こそが稼ぎ時。米リップルウッド・ホールディングスが長銀を新生銀行として再生させたのはあまりにも有名だが、しかし、「儲かる案件は食い尽くされた」(米系投資銀行関係者)。 小泉構造改革が郵政問題で政局に搦めとられる傍ら、海外マネーは「激変期の終わり」にしっかりと照準を合わせていた。リップルウッドは目下、買収した日本企業群を持ち株会社で束ねて上場させる計画を詰めているようだ。ゴルフ場買収で名を馳せた米投資銀行ゴールドマン・サックスも、ゴルフ場運営会社の上場準備に入っているとされる。海外ファンドは、いまや日本市場からの出口戦略にかかっている。 そんな“枯れた市場”に遅ればせながら突撃しているのが、他ならぬ日本マネーである。運用難に悩む企業年金を中心に、再生ファンドに託される資金は急増中。外資系でノウハウを身に付けた日本人も増えてきて、昨年以来、再生ファンドの設立ラッシュも続いている。だが、肝心の投資対象が残っていない。 ある大手銀行幹部は、「最近は不良債権を『売ってやる』立場になった」と嘯く。再生案件の“供給元”である銀行とファンドの力関係は逆転した。再生が難しい分だけ買い叩ける「破綻懸念」や「要管理」債権区分の案件を狙ってきたファンド勢が、いま、比較的危険度の低い「要注意」債権を漁っている。再生手腕がモノを言うような投資対象が減ったためだが、要注意債権は額面の九割という高値で売却されることすらあり、再生できても利益は少ない。

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