サミット開幕を彩ったテロ前夜の晩餐会

執筆者:西川恵2005年9月号

 イギリス北部スコットランドの保養地グレンイーグルズのホテルレストランに、バッキンガム宮殿から電話があったのは昨年十一月のことだった。「来年七月の主要国首脳会議(G8サミット)の幕開けにエリザベス女王が歓迎晩餐会を開く。ついてはその料理をお願いしたい」と電話の主は言った。 レストランのオーナーのアンドリュー・フェアリー料理長(四一)はフランスで料理を学び、四年前にレストランをオープンしたばかり。求めに応じて料理長は四種類のメニューを提案し、この中から決まったのが次のメニューである。 スモークサーモンにローストしたラングスティーヌ(手長海老)、サラダ添え グレンイーグルズの子羊のロースト、ソラ豆とエンドウ豆添え、マッシュしたナス、ポレンタ(トウモロコシ粉の粥)とともに チョコレートのデザート五種 材料はすべて地元産。デザートはチョコレートムース、アイスクリームに熱々のチョコレートソースをかけたものなど、チョコレートづくしの五種類。女王がチョコレート好きなことはよく知られていた。 飲み物はバッキンガム宮殿のソムリエが選んだが、G8各国のアルコールをすべて出す粋な計らいがなされた。女王とG8首脳の歓談では、食前酒として米カリフォルニアのスパークリングワインとフランスのシャンパン、ルイ・ロデレール。

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