中国「真珠の糸」戦略の狙いとは何か

執筆者:黒瀬悦成2005年9月号

石油資源確保のため、世界中で血眼になっている中国。最も重要な中東からのシーレーンについては、沿岸諸国に海軍の拠点を広げつつある。[ジャカルタ発]インドネシアのユドヨノ大統領は、七月二十七日から三十日まで中国を初めて公式訪問した。胡錦濤国家主席や温家宝首相らとの会談では、両国が今年四月に署名した「戦略的パートナーシップ宣言」の具体化策として、二国間の貿易額を二〇一〇年までに三百億ドルに拡大することで合意。また、ユドヨノ氏に同行した経済使節団は、総額七十億ドルを超えるジャワ島やスマトラ島での石油精製プラントや火力発電所の建設、鉄道建設などの大型プロジェクトに関する中国企業との協力協定に署名した。 中国からの直接投資の拡大は、経済再建を至上課題とするインドネシアにとっては「恵みの雨」となる。インドネシア商工会議所のヒダヤット会頭は、「このうちエネルギー分野の計画が始動すれば、中国からの投資は日本を一歩上回る」と指摘し、「各プロジェクトについて中国側の提示額は日本よりも三五%安く、我々の負担はより軽い」と付け加えた。 かつては日本企業の「牙城」と見られていたインドネシアにおける中国の影響力拡大は、日本を含む先進諸国にとって、経済問題を超えた深刻な懸念となりつつある。冷戦下で「東南アジアの反共の砦」の役割を果たしたインドネシアが、中国から投資拡大というアメを受け取る見返りに、中東から東アジアに至るシーレーン確保をにらんだ中国の安全保障戦略に組み込まれる可能性が強まっているためだ。

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