「安全保障上の懸念」を理由に激しく反対する米議会の意向に逆らって、米石油大手ユノカルへの買収を仕掛けた中国国有石油大手、中国海洋石油(CNOOC)。同社が八月初めに買収計画を断念したとたん、市場は皮肉な祝福を与えてみせた。 もともと米石油二位シェブロンが合意していた買収案件への“殴り込み”。相手を大きく上回る百八十五億ドルを投じるというCNOOCに、投資家たちは財務悪化を懸念した。ゆえにニューヨークと香港で上場しているCNOOC株が、買収断念が明らかになった翌日に大幅高となったのは不思議でない。 百八十五億ドルの大半を、CNOOCは親会社や国有銀行などから借りる予定だったと伝えられるように、中国政府が同社を強力に後押ししたのは明白だ。その買収計画が猛烈な反発を集めて頓挫したことで、中国石油企業の海外進出が後退する可能性も一部では指摘されている。しかし、ある大手米銀の中国市場アナリストは「経営現場はすでに政府よりもM&A(企業の合併・買収)に積極的」と、こうした見方を否定した。 CNOOCの董事長・傅成玉氏(一九五一年生れ)は石油ビジネスに関する知識も金融の知識も、政府が海南省の省長を連れてきて据えた前任者とは比べものにならないと、このアナリストは指摘する。米サウスカリフォルニア大学の修士号を持つ地質学者であり、二〇〇一年のCNOOC海外上場の指揮も執った。“飾り物”ではない経営者なのだという。

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