台湾の台北―高雄間(三百四十五キロ)を結ぶ「台湾新幹線」の開業遅れが確定的になっている。日本の新幹線システムが初めて海外に輸出される注目のプロジェクトだが、十月末予定の開業は一年ほど遅れそうだ。受発注時にさかのぼるボタンの掛け違いが技術・資金両面の不安を招いた結果と言える。 台湾新幹線は地元の有力企業が共同出資する民間企業、台湾高速鉄路が事業主体。総額四千六百億台湾ドル(約一兆六千億円)の建設費は民間で賄い、事業収入で回収した後に施設を当局に譲渡する「BOT方式」をとる。台湾高鉄は独シーメンス、仏アルストムなど欧州企業連合に鉄道発注を内定していた。 しかし一九九九年末、三井物産や三菱重工業など商社・メーカーのほか、新幹線技術を握るJR東海が控える日本企業連合への発注変更を決めた。「地震の多い台湾には日本の新幹線がふさわしい」などと説明されたが、親日家の李登輝総統(当時)の意向も働いたとされる。 日本勢は「逆転受注」に沸いたが、欧州方式を前提にプロジェクトが始動していたボタンの掛け違いが、今に至って技術面で祟った。台湾高鉄の殷キ・董事長は地元のゼネコン大手、大陸工程の二世経営者で、他の幹部も鉄道知識には乏しい。そこで欧米人の鉄道技術者を百人単位で雇い、技術関係を全面的に任せる態勢を敷いていた。

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