エジプトが直面する「未知のテロ」の脅威

執筆者:村上大介2005年9月号

七月の連続爆破テロは、国内イスラム過激派対策では成功してきたムバラク政権の「アルカーイダ型テロ」への脆さを浮き彫りにした。 英ロンドン同時爆破テロと連動するかのように七月二十三日未明に発生、八十八人の死者を出したエジプトの保養地シャルムエルシェイクでの連続爆破テロは、九月に初の複数候補による大統領直接選挙に臨むムバラク大統領に対して「治安対策上、まったく新しい挑戦を突きつけた」(汎アラブ紙アッシャルクルアウサト)と指摘されている。 エジプト当局は「地元シナイ半島のベドウィン(遊牧民)の一部不満分子の仕業」と地元グループの単独犯行説を強調するが、「世界のどこであれ、敵(米国とその同盟者)を殺せ」と“グローバルなジハード(聖戦)”を唱える国際テロ組織アルカーイダの痕跡は、このシャルムエルシェイクのテロでも否定できない、との見方が根強く燻っている。 エジプト内務省は八月一日、スエズ運河南入り口に位置するスエズ市に近い山岳部に潜伏していた重要容疑者ムハンマド・フライフェル(年齢不詳)を治安部隊が追い詰め、銃撃戦の末、射殺したと発表した。 ムハンマドは昨年十月にシナイ半島東部のタバなどで起きた連続爆破テロでも実行犯の一人として指名手配されていた。同じ人物が今回浮上したことの重要性は、エジプト当局が今回と昨年の事件を関連付けることで、なんとかこの二つを「同一グループによる単独犯行」として片付けようとする姿勢が透けてみえるところにある。

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