ベトナム経済成長のカギは「中国西部市場」

執筆者:ケイ・ジョンソン2005年9月号

平均所得を過去十年で倍増させ、貧困を半減させたベトナム経済。さらに成長するための糸口は意外なところに――。[ハノイ発]「今年上半期、わが業界の対米輸出はわずか五%の伸びにとどまった」――ベトナム繊維・衣料製品協会会長のレ・クオック・アンはこう嘆く。「今は衣料製造業者にとっては、あまりいい時期ではない。ベトナムはまだWTO(世界貿易機関)に加盟していないため、アメリカ市場で輸入数量規制(クオータ制度)という足枷をはめられているからです」。 成長率が二桁に乗らないことに失望する、こうしたアン会長のような人物を見るだけでも、急成長をつづけるベトナム経済がいかに“野心的”かがわかるというものだ。 五%の成長率ならばさして嘆くには当たらないはずだが、ベトナムの製造業者は二桁の伸びに慣れてしまっている。それどころか、近年では三桁の伸びも珍しくなかった。二〇〇一年から二〇〇三年半ばにかけて、アメリカ政府がクオータ制度を課すまでは、ベトナムの繊維・衣料製品の対米輸出高は四千七百万ドルから四十三億ドルへと、百倍近い伸びを見せてきた。 年内あるいは二〇〇六年早々にも予定されるWTOへの加盟によってクオータ制度の撤廃を図り、最低でも二桁台の成長率を回復したいと、ベトナムの衣料製造業者たちは考えている。しかし、ベトナムの輸出業者には、さらに行く手を阻むものがある。全世界のあらゆる市場に安価な繊維製品を送り込む「中国」という圧倒的な競争相手の存在だ。

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