「直ちに衆議院を解散する。改革を妨害する古い勢力とは手を切る。古い自民党をぶっ壊し、新しい自民党で選挙に勝つ。そうすれば参議院で反対した人たちも間違いに気づく」 八月八日午後、参院本会議で郵政民営化関連法案が否決された直後に国会内で開かれた自民党役員会。肩を落とし沈痛な表情を浮かべる党幹部を前に、小泉純一郎首相は滔々とまくし立てた。不思議なことに、その顔に落胆の色は微塵もなかった。 発言は具体的な選挙対策方針にも及んだ。衆院本会議採決で反対票を投じた綿貫民輔元衆院議長や亀井静香元政調会長ら三十七人は全員公認しない。反対者の選挙区すべてに自民党公認の対抗馬を立てる。欠席・棄権者十四人については郵政民営化に賛成する意思を確認できた人のみ公認する。物言いには有無を言わせぬ異様な気迫がみなぎっていた。「郵政民営化の是非を問う解散」と位置づけ、党として「是」を掲げる以上、反対者を公認することはできない。欠席・棄権者もきちんと色分けする必要がある。対抗馬擁立は「是非を問う以上、賛成派候補を全選挙区に立てる義務がある」という論理だった。非情とはいえ正論である。「仲間に対して何もそこまで」と思った役員が少なくなかったはずだが、声を上げる者はいなかった。

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