「ガザ撤退無事完了」でも不透明な和平の視界

執筆者:立山良司2005年10月号

パレスチナにあってはハマス、イスラエル側ではネタニヤフ元首相。それぞれの強硬派が和平路線に立ちふさがる。 ガザ地区は古代、ナイル川流域とメソポタミアの二つの文明圏を結ぶ“ハイウェー”の中間点として栄えた。近代以降も交通の要衝としての役割は変わらず、第二次世界大戦以前はパレスチナ地方のエジプト側への玄関口だった。そのガザから八月、八千五百人のユダヤ人入植者が退去した。九月十二日にはイスラエル軍の撤退も完了し、すべての権限はパレスチナ側に移譲された。過去三十八年間、入植地拡大路線をとってきたイスラエルがガザから完全撤退する意味は大きく、イスラエル、パレスチナ双方の政治状況に重大な変化を及ぼし始めている。この先半年ほどの動向は、中東和平プロセスの今後を中長期的に規定するに違いない。 撤退開始直前の一週間、イスラエルに滞在した。その間、反対派はエルサレムやテルアビブで大規模な抗議集会を開くなどしていたが、反対運動はもうひとつ盛り上がっていなかった。多くの国民は「撤退は当然」とクールに見ているからだ。強制撤去が予想よりはるかに順調だったのも、反対派が社会から浮いた存在だったことを物語っている。経済発展を阻む「ゲットー化」

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