八月二十三日朝から、ミャンマーの首都ヤンゴンでクーデターの情報が飛び交い始めた。「政府から重大発表がある」との情報は時間とともに具体性を帯び、午後には「軍政トップ、タン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長が心臓病で入院」「ナンバー2のマウン・エイ副議長が実権を掌握」などの未確認情報が流れ、英BBCラジオのビルマ語放送が「シュエ議長が汚職と親族重用で退任に追い込まれた」と報道。翌日のタイ紙が「副議長によるクーデター」と報道する事態にまで拡大した。 タイのタクシン首相はクーデター情報を否定したものの、ミャンマーが日頃から厳しい報道管制を敷いているせいもあって確認は取れない。結局、九月一日にタイの外相がヤンゴンでシュエ議長と直接会談し、その姿を写真撮影したことで、ようやく誤報が確定した。 偽情報の背景には、議長関係者が身内の見舞いにシンガポールの病院に赴いたり、副議長の長女が出産のため陸軍病院に入院して警備が強化されたりといった偶然があった。 昨年十月にキン・ニュン首相を突然解任するなど、シュエ議長による体制固めが着々と進む一方、首相解任でナンバー2のエイ副議長が勢力を拡大して議長の座を脅かすなど権力争いが熾烈化しているとの情報もあり、これが未確認情報に現実味を持たせ、騒ぎを大きくした。

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