これまで「フランスが率いる欧州」だったEUで変化が起きている。イギリスが提示する新モデル「経済重視の欧州」の勢力図とは――[ロンドン発]頑健で知られるフランスのシラク大統領(七二)が九月二日夜、視覚障害を訴えてパリ市内のヴァル・ド・グラース陸軍病院に緊急入院した。病院側は「血の塊ができて血管の障害が起きた」と発表したが、ポンピドー、ミッテランの歴代大統領が病状を隠していた過去を知る国民は、その発表を信じようとしない。シラク大統領本人も一九九五年の就任以来、一回も入院したことがなく、健康に自信を持っていただけに、大きなショックを受けたのは間違いない。 シラク大統領が入院したその週末、英国のブレア首相(五二)は北京へと飛び立った。七月から担当になった欧州連合(EU)議長国として、中国の胡錦濤・国家主席との首脳会談に臨むためだった。世界の一大パワーとなっていく中国との間で、より明確なパートナー関係を築き、EUの外交力を高めるという大役を負っていた。 今まで全く無縁だった健康問題が浮上したシラク大統領と、二度のテロによる社会不安を抑える宰相として注目を浴び、さらに中国首脳との記者会見を世界各国に見せたブレア首相。それは、欧州で沈むフランスと、輝きを取り戻す英国の対比を映し出した。シラク大統領とブレア首相という二人の指導者の力関係そのものを示しているとも言える。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。