米ライス外交「現実的理想主義」の復権と空転

執筆者:西村陽一2005年10月号

ライス国務長官は外交の復権を模索し、「よき意図」よりも「よき結果」を求める方向へシフトしつつある。しかし、中東の現実は厳しい。[ワシントン発]コンドリーザ・ライス米国務長官は、毎日、午前八時と午後六時半の二回、ロバート・ゼーリック副長官、ブライアン・ガンダーソン首席補佐官、ニコラス・バーンズ政治担当次官、フィリップ・ゼリコウ顧問ら、ごく少数の側近を集めて会議を開く。米外交の主要な戦略は、今ではこの場で議論されている。 出席者のひとり、ゼリコウ氏は、かつてブッシュ(父)大統領の国家安全保障会議でライス氏の同僚だった。ライス氏とは、ドイツ統一に関する本を一緒に書いた仲でもある。また、元『ロサンゼルス・タイムズ』紙記者ジェームズ・マン氏の著書『Rise of the Vulcans』(邦訳『ウルカヌスの群像』)によれば、ゼリコウ氏はバージニア大教授だったブッシュ(子)政権一期目に、国家安全保障担当大統領補佐官だったライス氏に頼まれ、「国家安全保障戦略」(通称「ブッシュ・ドクトリン」)の草案を執筆した。 ライス長官に請われて政権入りしたゼリコウ氏は今年、東京で会った日本政府高官に、「これを読んでほしい」と言い、ある文書を手渡した。この五月、ライス氏が副学長を務めたことのあるスタンフォード大学で、ゼリコウ氏が行なった講演「現実的理想主義―歴史的視点からみた現在の政策」のテキストである。

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