香港名物「メードさん」賃金引下げの事情

執筆者:竹田いさみ2005年10月号

 日曜日の過ごし方は、「公園に行って友達に会うこと」――これが香港在住のフィリピン人とインドネシア人の共通した答えだ。香港島の公園や広場を日曜日に巡ってみると、お弁当やお菓子を持参した女性の集団が公園を“占拠”している姿をよく目にする。 たとえば香港島のショッピング街に近いヴィクトリア公園。この公園はインドネシア人の住込みのお手伝い(メード)さんが、日曜日に大挙して集合する「名所」で、静寂さとは無縁だ。埠頭の方へ足を運ぶと、欧米人の長期滞在者がセーリングを楽しむヨットクラブもある。国際問題のコラムニストとして著名な英国人フィリップ・ボウリングは常連客の一人だ。日本人の観光客は、こうした公園に足を踏み入れることはない。モーニングティーを飲みながらゆったりした気分に浸りたいと思っても、女性たちのお喋りで喧噪状態の中ではその夢は叶わないのだ。 インドネシア人メードの夢は、携帯電話を片手にディズニーランドに行くことだという。インドネシアでは高価で手にすることができなかった携帯電話が、香港では出費を切り詰めれば手に入る。大勢のメードが、待ち合わせしている友達と携帯で連絡しながら公園に押し寄せてくる。まさに押し寄せるという表現がぴったりの光景だ。あえて携帯を使わなくても済むのだが、彼女たちの顔にはケイタイを使える喜びが溢れている。

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