総選挙で農林族議員の力が低下した今こそ、「政治家と農協のため」から「国民と農民のため」の農政へ変えるチャンスだ。 衆議院で郵政民営化法案が可決され、参議院での同法案採決が目前に迫っていた七月末、全国農業協同組合中央会(全中=各農協の指導を行なう中央組織=)と自民党農林族が一丸となって握りつぶしたペーパーがある。首相の諮問機関である規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)がまとめた「中間報告(案)」だ。そこには「農協事業の分離・分割」という大胆な改革案が盛り込まれていた。 具体的には、(1)現在の農協が総合的に運営している信用(貯金)・共済(生命・損害保険)・経済(物品の販売・購買)の三事業を分離、(2)不正取引を防止するため農協に対する独占禁止法の適用除外を見直す、(3)会計監査を第三者機関に委ねる、という内容だ。当初は七月末に「中間まとめ」、年末に「最終まとめ」という段取りだったが、全中は「農協の存立を崩す」と猛反発。国井正幸氏ら参議院自民党の農林族が「農協の改革案が盛り込まれれば、郵政民営化法案にも賛成できなくなる」と官邸に働きかけた。 結局、総選挙後の九月二十七日に再開された推進会議は、「中間報告」を「提言」と格下げし、農協改革を盛り込むのも見送った。また、同日の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が示した「改革工程表」では、農業の規制改革は来年度の課題とされ、「農協分割」はひとまず先送りされたのだった。

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